生涯、罪を背負って生きた「藤壺(ふじつぼ)」(2)
藤壺(ふじつぼ)は、桐壺(きりつぼ)天皇の寵愛を受けながらも、光源氏と密通し、そのため罪の意識に生涯さいなまされ続けた女性です。
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「源氏物語」で登場する女性たちをご紹介シリーズ
前回に引き続き「藤壺(ふじつぼ)」です。
さて、前回・前々回に書いた、桐壺と藤壺の物語は、源氏物語1帖「桐壺」に書かれたものです。
(源氏物語は、全部で54帖あります)
そして、次に藤壺が登場するのは、5帖「若紫(わかむらさき)」です。
(それまでに光源氏は、複数の女性と関係を持ちますが、また別の機会に…)
実は、この間に、藤壺との秘かな関係が書かれた「失われた帖」があるとされています。
光源氏は18歳になっています。
ある日藤壺は、病を患ったため、宮中を出て実家に帰ります。
これはチャンスとばかりに、光源氏は藤壺を追い、関係を持ちます。
「あさましかりしを思し出づるだに、 世とともの御もの思ひなるを、さてだにやみなむと深う思したるに」
与謝野晶子の訳文を引用すると
「(藤壺は)過去のある夜の思いがけぬ過失の罪悪感が、一生忘れられないもののように思っておいでになって、せめてこの上の罪は重ねまいと深く思召したのであるのに、またもこうしたことを他動的に繰り返すことになったのを悲しくお思いになって」
(さすが、美しい訳文です!)
つまり、以前にも関係を持ってしまっていたのです!
それこそが「失われた帖」に書かれていたのではないかと考えられているのです。
そして、この過ちにより、藤壺は妊娠をしてしまいます。
もちろん桐壺天皇は、自分の子だと思っているので、喜んでいます。
光源氏も、自分の子だと確信し、なんとか藤壺に逢いたいと画策します(出産のため実家に戻った時も、追いかけます)が、無理でした。
そして、人々の予想より二か月以上遅く(意味ありですね)男の子が生まれました。
「いとあさましう、めづらかなるまで写し取りたまへるさま、違ふべくもあらず」
光源氏にそっくりで、誰が父親かは間違いなく「疑われるのではないか」と思うと、藤壺は宮中には戻れませんでした。
その間も、光源氏は実家にやってきて、逢いたいと泣いて頼みますが、もちろん拒絶します。
(ホンマ、人の気も知らんと、うっとおしいヤツ!)
そしてやっと宮中に戻り、天皇がご覧になった時、
「いとよくこそおぼえたれ。いと小さきほどは、皆かくのみあるわざにやあらむ」
「(光源氏に)よく似てるけど、小さい時は皆そんなもんかな」と、非常に可愛がられ、後に天皇になれるよう、藤壺を「中宮(ちゅうぐう:天皇の正妻)」にします。
それが余計に藤壺にとっては苦痛となり、罪の意識に生涯さいなまされるのでした。
その後の藤壺は、桐壺院(その頃、天皇を譲って院になったので)が亡くなった後、出家し、37歳で亡くなっています。
※ 表記中、太文字と斜め書きになっている箇所は、原文から引用しました。
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